最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)5727号 判決 1954年11月05日
主文
原判決並びに第一審判決を破棄する。
本件を横浜地方裁判所に差戻す。
理由
東京高等検察庁検事長花井忠の上告趣意について。
いわゆる囮捜査は、これによって犯意を誘発された者の犯罪構成要件該当性、責任性若しくは違法性を阻却するものでないことは、既に、当裁判所の判例とするところである。(昭和二七年(あ)第五四七〇号同二八年三月五日第一小法廷決定)。とすれば、本件被告人の麻薬所持の行為をもって、いわゆる囮捜査にもとづくものであるが故に犯罪行為としての反社会的危険性を欠くものとして、被告人に対し無罪を言渡した第一審判決を維持した原判決は法令の解釈を誤り、前示当裁判所の判例に違反するものと云わなければならない。論旨は結局理由あり、原判決及び第一審判決は破棄を免れないものである。
よって刑訴四一〇条四一三条を適用し、全裁判官一致の意見をもって主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)